負担軽減と自立支援にちょうどよいロボット技術

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負担軽減と自立支援にちょうどよいロボット技術

 福祉のまちづくり研究所(運営:兵庫県社会福祉事業団、神戸市、陳隆明所長)は、地元の大手釣り具メーカー「がまかつ」(兵庫県西脇市、藤井敏孝社長)と共同で、トイレ介助動作を2人から1人にできる介護ロボット(排泄支援機器・動作支援)「サットイレ」を開発。がまかつが11月より販売を開始した。開発にあたっては、同事業団運営の特養「万寿の家」で徹底的に検証を重ねた。自立支援促進加算への注目が高まる中、医師でロボット医療の第一人者である陳所長は「排泄動作の自立から始めるのが近道。排泄は生理現象で、1日に何度も自然と全身運動をする機会を本人に促す。排泄行為の介助人数を減らせるということで本人の尊厳も保持できる」と狙いを説明する。

介護ロボットが担うのは 「負担が大きい部分・人ができない部分」

兵庫県立福祉のまちづくり研究所 陳隆明所長

兵庫県立福祉のまちづくり研究所 陳隆明所長

 「国の進める介護ロボットの重点分野は、現場のニーズが見込めるとされたものであるが、どこまで自動化・機械化させるかによって、本人や現場スタッフが使いたい(使える)ものとなるかが決まってくる」と陳所長。「介護ロボットですべて解決させようとすると、途端に使いにくくなる。負担が大きい作業、人ができない箇所を見つけて、そのための機器を開発することが必要」と話す。

 今回の「サットイレ」も非常にシンプルで▽体を引き上げるリフト機構▽狭い個室内でも体を回転できる機構――が主な機能。1週間で全職員が使いこなせる分かりやすさ、親しみやすさも特長。一般家庭の個室にも設置できるほどのコンパクト設計となっている。

 そこに、釣り具メーカー大手のがまかつの技術を活かし「釣り竿に採用される丈夫で適度にしなるカーボンパイプを使用」「上肢を固定する胸部支持具は、釣り用のライフジャケットの装着のしやすさを応用」が使い勝手を補完する。

 実際には、洋式トイレへの移乗・体幹保持・立位保持(おしりふき・下衣の上げ下げ)のうち、本人にとって負担となる体幹保持や立ち座り動作などをアシストする。

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トイレでの自立排泄は自立促進の近道

 開発にあたっては、同事業団の運営する特養「万寿の家」の利用者や介護職などで実証を重ねた。同施設は兵庫県初の特別養護老人ホームで、排泄は一部を除き、原則として介護職2人介助によるトイレ排泄を基本としてきた。
 介護職の負担軽減のため、ベッドサイドで移乗すれば、そのまま便器を跨いで便座になるタイプの車いすも活用してきたが「本人にとっては自立支援にはならなかった」と陳氏。

 サットイレを導入してからは、前方に体を振り出し、踏ん張る動作ができる人であれば、不足する力をアシストしてくれる。胸部支持具の装着や軽介助など、1人の介助者が付く必要があるが、これまでの2人介助からは半分の人員で排泄介助ができるようになった。

 「介助者が車いすを介助して個室に横づけすれば、一連のトイレ動作の大部分を機器がアシストしてくれるので、1人介助でできるようになる。本人もリハビリやトレーニングを意識しないで、全身運動を繰り返すことになり、自然と自立に向かっていく。そして歩行や入浴などADLの向上がつながっていく」と、トイレの自立から始めることが、自立支援の近道であると陳氏。

人的介護を上回る効果も

 意外な効果として、パナソニックの計測技術を使って利用者の首への衝撃を調べたところ、サットイレで介助した時の方が自然な軌道を描き、2人介助は不自然な軌道により首への衝撃が大きいことが分かった。「2人介助時より本人にとって良い介護ができたのであれば、専門職としても、進んで使用するようになる」と陳氏。介護ロボットが新しい介護の価値を与えるものとなりうる発見だった。

 本人の尊厳保持効果も期待できる。リフトでいえば布製のスリングにあたる部分をカーボンパイプとしたことで、適度なソリッド感があり座位保持機能を有することから、便座移乗後は介助者が個室外に退出しても、便座から転落することなく排泄を終えることができる。「カーボンの良さは適度にしなるので身体拘束にも当たらない。材質の良いところを活かせた」(陳氏)。

(シルバー産業新聞2021年12月10日号)

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