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《ヤングケアラー》理解されていると感じられる安心の場を/高岡里衣さん(特定非営利活動法人ふうせんの会)

《ヤングケアラー》理解されていると感じられる安心の場を/高岡里衣さん(特定非営利活動法人ふうせんの会)

 特定非営利活動法人ふうせんの会(大阪市)職員の高岡里衣さんは、小学4年生の頃から24年間、難病の母が亡くなるまで介護を続けたヤングケアラー当事者だ。 幼少期から葛藤の中、入退院を繰り返す母の介護や家事を担い、現在はその経験を活かしケアラーの支援を行う。今回、自らのケアラー体験と支援のポイントについて聞いた。

母の介護とともにあった子供時代

 小学4年生のときに母が指定難病の多発性筋炎を発症しました。私は、もともと家の手伝いをよくしていたので、その延長で母の身の回りの世話をするようになったのが介護のはじまりです。

 当時は中学受験の時期で、学校から帰ると洗濯物を集めて入院中の母の見舞いに行き、病院で母と食事をしてから夜遅くまで塾に通う生活をしていました。そのうち、家族の生活用品や食事の買い出しもするようになりました。

 小学生の頃は、母と一緒に過ごしたかったことや勉強が楽しかったことも支えとなり、介護が嫌と思うことはありませんでした。

 中学の頃から、自分が周囲と違うと感じるようになり、授業参観や卒業式に親が来ないと寂しさを覚えるようになりました。周囲が遊びや部活の話をしている中、自分は家事をしなければならない。

 「自分の思うように生きたい」と考える一方で、闘病する母がかわいそうだと思い、友達と遊びに行った時も母のことが頭をよぎり常に罪悪感に苛まれました。

 「介護がなければ違った人生があったかもしれない」と思うこともありましたが、「健康な自分がわがままを言うことは悪いことだ」と自分に言い聞かせることの繰り返しでした。

介護保険への切り替えで介護負担が増加

 大学生の頃に、母が間質性肺炎を発症し身体障がい者の認定を受けたため、ヘルパーの利用をはじめました。

 卒業後は地元企業に就職しましたが、母の状態の悪化に伴い介護離職しました。その後、ヘルパーや訪問看護を利用しながら、パートやアルバイトなど在宅の仕事をしていましたが、母の状態が悪くなれば仕事を休まなければならず、職場の理解が得られないまま退職することもありました。母が65歳を迎え介護保険へと切り替わり、それまで受けられていた母の身の回りの掃除や食事の準備などのサポートが受けられなくなりました。年齢とともに病状が悪化する中でサポートの範囲が狭まることに大きな矛盾を感じました。

 障がい者福祉では、母の見守りに加え、食事を準備してもらったり掃除をしてもらったりが可能でしたが、介護保険に切り替わってからは、母が亡くなるまでの間、ほぼ一日中、介護に専念するようになりました。

「あなたも元気?」の声掛けを

 幼少期は、「お母さんのことをお世話してえらいね」「いい娘さんね」と声をかけられてうれしく思っていましたが、次第に自分の理想との乖離から負担に感じ、それでも「介護がなければ」と考えてしまう自分を「優しくない」と責め続けていました。

 介護現場では、子どもがキーパーソンになってしまうことや、介護力とみなされ過度の責任を背負わされることがあります。「お世話をしているあなたも元気?」と気にかけることが、「自分自身のことも考えてよい」とケアラー自身が気づくきっかけとなります。

 また、「困ったらいつでも言ってね」の一言で、頼れる大人がいると思えることが、ケアラーにとって安心して過ごすための鍵となります。

自分の価値観を押し付けない

 母の介護が終わりケアラーのピアサポートの場「ふうせんの会」で、自身の経験を活かしケアラー支援に携わるようになりました。

 大人は自分の方が人生経験があると思い、自身の価値観を押し付けて子どもの話を最後まで聞かないことがあります。

 支援の場では、自分の中で相手のことを決めつけないことを大切にしています。

 自分が体験したり、感じたことのない気持ちをケアラーが感じているかもしれないと思い、言葉を遮らずに寄り添う姿勢で対話し、関係性を少しずつ創っていくよう心がけています。

 ケアラーにとって、周囲から見守られつつも、家族や友達の所に帰らなくてよいのかと問いただされない場所は心の支えとなります。「誰かの世話をしていて大変だろうな」ということが理解されていると、ケアラー自身に感じてもらえるような支援を続けていきたいと思います。

高岡里衣さん
(たかおか・りえ)
 特定非営利活動法人ふうせんの会

「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」

今年3月に厚労省より発出された自治体、学校、医療・介護関係者などヤングケアラーに関わるすべての人に向けて、ヤングケアラーの発見や支援のつなぎ方などをまとめた支援マニュアル。
 介護現場では、利用者の家族にサポートが必要なケアラーがいるかもしれないことを意識し、子ども・若者が家族の介護をしている姿を見かけた場合などを発見のポイントとして挙げている。
 ケアの対象が高齢者や障がい者であった場合、ケアマネジャーやヘルパーなどの介護関係者が、ケアラーと自治体などの各種支援機関の橋渡し的な存在になることが多い。
支援に関しては多職種連携が重要となり、特に介護現場では、子ども・若者の言葉に耳を傾けつつ、ケアラーの負担が減るように居宅サービス等を有効利用し、自治体によっては専門の相談窓口を設置している場合もあるため、必要に応じて連携しながら支援を行う。

(介護の日しんぶん2022年11月11日)

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