重度訪問介護に地域格差 1都6県を調査

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重度訪問介護に地域格差 1都6県を調査

 重度訪問介護事業所「ホームケア土屋」を運営する土屋(岡山県井原市、高浜敏之代表)は、このほど、関東地区の1都6県(神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨木)の316市町村を対象に、重度訪問介護サービスの利用状況に関するアンケート調査を行った。

 同社は現在、全国44都道府県、47か所で重度訪問介護サービスを展開し、約750名の利用者を抱える。しかし、重度訪問介護については、サービスを受けられないという声があとを絶たず、その要因なども含め今回、調査を試みた。

 そもそも、重度訪問介護については、事業者や利用者に関するデータが不足しているため、問題が可視化されにくく、社会全体で解決に向けた議論が進まない状態にあるという。しかし現状では、障がい者の高齢化は進み、また、高齢の親が障がいのある子をケアする“老障介護”も増えている。本人が自宅で自立して生活するためだけでなく、家族の介護負担が増加する観点からも、このサービスの普及が望まれる。調査項目としては、重度訪問介護について次の3点を調べた。

1.利用人数の地域格差
 利用状況については、「利用者がいない」市区町村は、 約3割(31.1%)に登った。利用率については、「人口あたりの重度訪問介護利用率(重度訪問介護利用者数÷都道府県人口)」が最も高いのは東京都で、0.025%。最も低いのは栃木県で0.001%だった。その差は18・6倍となっている。

2.支給時間の地域格差
 ひと月に利用する時間については、「一人当たりの支給時間/月」が「50時間未満」の市区町村が4割以上(43.3%)だった。「一人当たりの支給時間/月」が最も高いのは東京都で、最も低い「茨城県」との格差は、 平均値で2.3倍、中央値で8.8倍だった。

3.登録事業者数の地域格差
 登録事業者数と利用者との関係をみると、全体のうち「利用者数よりも登録事業者数の方が多い」市区町村が76.1%で、登録事業者は決して少ないわけではない。しかし、登録事業者数が多い地域ほど、その地域の利用者数が多いとは言えない結果となった。登録事業者数と利用者数との間に相関性は見られなかった。

 調査を行った高浜敏之代表は、重度訪問介護が受けられない要因として、ヘルパーの人手不足を挙げる。同社で求人すると応募者は多いが、実際に現場で働ける人数は限られる。それだけ難しいケアが求められるからだと話す。また、低賃金と、3kと言われるイメージも根強く、その点も懸念する。

 事業者がサービス提供を控える要因としては、障害者総合支援法の“総合”という意味が、特に訪問介護事業者に理解されにくく、サービスの幅を広げることに伴う事業者リスクが懸念される点もあるという。もともと介護保険の訪問介護事業者が障害サービスを担う場合が多く、やって良い介護、ダメな介護などが分かりにくく、ヘルパーが障害サービスを選ばなくなってしまう傾向もあるという。

 今回に調査では、東京都ではかなり普及しているものの、地方に行くほど利用されていない実態がつかめた。地方ほど重度訪問介護を使っていない背景には、施設や病院で過ごす人が主流で、まだまだ地域で暮らす、または暮らせるという価値観が広がっていない点が挙げられる。使った前例がないので決定の基準が分からないという自治体や、申請しない障がい者もおのずと多いのが現状だ。

 同社の研究部門を担う吉田政弘所長は、国の調査による登録事業者の数と、実際に稼働している事業者の数は異なっていると話す。全国的な水準では、サービスの提供者は少なく、サービスは十分には普及していないと見ている。障がい者本人からは、今回の調査について感謝の声が届き、障がい者の思いに応えた形になった。今後も調査を継続して、データを集めて国や自治体の政策決定の判断材料を提供していきたいと話している。

 調査概要
 ・調査実施期間:2022年8月12日~10月3日
 ・調査対象:関東地区の全ての市町村(1都6県:316市町村)
 ・調査方法:電話調査及び各自治体の公式発表データから収集・分析

 重度訪問介護事業所「ホームケア土屋」
 https://homecare-tsuchiya.com/

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