社会福祉法人埼玉県共済会 救貧・防貧から介護まで地域に根差した1世紀
渋沢栄一の支援を受けて発足
介護保険以降は、収益性の確保も課題に
一方、事業経営では厳しい面もあった。措置時代の運営が長く、社福法人として公正で安定した事業運営に努めてはいたが、介護保険が始まり、さまざまな法人が参入する中で、利用者獲得の競争に勝ち抜くという意識が率直に言って足りなかった。
収益性を高めるために、市内で不足していた老健や通所リハを開始し、在宅から老健・通リハ、そして特養という一貫したサービス提供体制を整備した。また市からの委託で地域包括支援センターの開設や、養護老人ホームでは特定施設入居者生活介護の指定も受けた。そのほか、保険外サービスも手掛けてきた。
深刻なヘルパー不足、養護の特定施設指定を廃止
②人材確保は、あらゆる職種の確保が年々難しくなっている。特にヘルパーは募集しても集まらない状況が長く続き、昨年は養護老人ホームの特定施設の指定を廃止した。地域の在宅要介護者へ訪問介護を提供するための判断だ。養護老人ホーム入所者は支援員を増員し、ヘルパーは地域へのサービス提供により注力できる体制に切り替えた。処遇改善加算などにより、介護職員の賃金が引き上げられる一方、対象にならない居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアマネジャー確保も難しくなっている。
当法人では、20年度以降、賃金体系の見直しや定年の引き上げ、人事評価制度の導入、資格取得の費用支援や表彰制度の充実など、さまざまな取り組みを展開してきた。正職員のおよそ半数、非常勤では8割以上が50代以上と職員の高齢化も進む。若年層の職員の確保も不可欠だ。
③物価高騰下での事業経営は、半年の法人全体の水光熱費が、昨年と比べて700万円増とほぼ倍になっている。経費削減計画を策定し、CSRやBCPの視点も含めて、地下水ろ過システムや太陽光発電システムの導入などを検討しているところだ。
こうした不安定な要素が多い介護分野では、現状、事業拡大に舵をきることは躊躇される。現行の事業の安定継続に力を注ぎながら、地域協働の体制づくりを進めていくことが、長く地域に根差した当法人のあり方のように思える。ただ、地域のために何ができるかを追求し続ける姿勢は崩さない。コロナ禍で歯がゆい状況が続くが、これからも住民の幸福感や安心感向上のために、法人の役割を見つめ、果たしていきたい。(談)