ケアマネジメントにとっての惑星の直列!?/石山麗子(47)

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ケアマネジメントにとっての惑星の直列!?/石山麗子(47)

 筆者は、ケアマネジメントとケアマネジャーに今おきている状況を「惑星の直列」と称し、春先から大学院のゼミ生や、ごく身近な人にだけ話してきた。本号では思い切って紙面でご紹介しようと思う。

 介護保険制度施行以降、今ほど重要な事業が並行して進められたことはない。この状況が今、起きている理由を考えた。先達の功績によって日本のケアマネジメントが成熟してきた成果と、避けようのない社会情勢の激変をも果敢に受け入れ、進化し続けるケアマネジャーの努力ゆえであると感じた。

 ところで、惑星の直列とは何か。大切なことなので一つひとつ見ていこう。筆者が考える惑星の直列にと思われる事項には初出のところに[ ]をつける。

 今年4月[介護支援専門員の法定研修カリキュラム改定]を見据え、介護支援専門員の法定研修のカリキュラム及びガイドライン案が発出された(1)。11月には、パブリックコメントが行われた(2)。法定研修の主な改定の柱は3つあり、その一つが[適切なケアマネジメント手法]だ。

 適切なケアマネジメント手法は2016年から開発され、21年度から普及のフェーズに入った。この手法の誕生によって、これまで潜在的なものであったケアマネジメントの知識と言語が体系化された。法定研修に導入されれば、日本のケアマネジャーの標準知識となる。

 08年に作成された[ケアプラン点検支援マニュアルの改定]も進められている。改定のポイントの一つに、適切なケアマネジメント手法がある。介護支援専門員が法定研修で学んだ内容に準じて点検が行われるという考え方だ。

 ケアプラン点検支援マニュアルの改定に準じて、保険者の使用を想定した[ケアプラン点検AI]の開発も進められている。また、ケアマネジャーの使用を想定した厚生労働省の老健事業[ケアプランAI]開発にも適切なケアマネジメント手法は導入されている(3)。学ぶ→実践する→点検するプロセスは、一つの手法に統一される。その延長線上で、人とテクノロジーが融合するケアマネジメントを創りあげることになる。

 21年度介護保険制度改正では、科学的介護の確立を目指して科学的介護情報システム(以下、LIFE)が導入された。居宅介護支援や訪問介護でもモデル事業がすすめられている。近い将来、LIFEの導入は居宅サービスに広がることは想定の範囲である。LIFEの情報提供項目は、厚労省から様式例が示されている。バーセルインデックスなど、統一された評価基準である。LIFEを活用する施設や事業所は、多職種間の情報項目にも変化を生じさせている。連携の要である介護支援専門員が事業所ごとに異なるアセスメント様式を使用していることへの指摘である。[課題分析標準項目の見直し]の必要性が生じた。現在、課題分析標準項目の課題等の実態把握と整理が行われている。

 ここまでは、要介護高齢者等本人にまつわるケアマネジメントだったが、[家族等への支援]を抜きにケアマネジメントの実践は行えない。20年に厚労省で作成された仕事と介護の両立支援の研修プログラムは次期法定研修へと吸収される見込みだ。ヤングケアラーのアセスメントの検討は現在進められている。何らかの形でケアマネジャーにも関係が出てくるだろう。

 惑星の直列といっても過言ではないということをご理解いただけただろうか。今でももう精一杯という気持ちにも深く共感する。しかし、変化する環境下で現状維持を貫けば、周囲の期待との間にギャップが生じる。我々が変わらなければ利用者は守れない。これまでとは異なる次元で、激変する社会情勢を踏まえ、少し先の将来を予測しながら、高齢者とその家族の生活を支援するケアマネジメント機能とはどういうものなのか考える時期に来ている。

(1) 介護保険最新情報Vol.1073
(2) 厚生労働大臣が定める介護支援専門員に係る研修の基準及び介護保険法施行令第三十七条の十五第二項に規定する厚生労働大臣が定める基準の一部を改正する告示案に関するご意見の募集について
(3) 国際社会経済研究所(NEC)

(シルバー産業新聞2022年11月10日号)

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