ケアマネの視点 できることを増やす福祉用具

ケアマネの視点   できることを増やす福祉用具

ケアマネの視点 できることを増やす福祉用具

マロー・サウンズ・カンパニー代表 田中紘太さん

福祉用具専門相談員と連携して
その人に合った福祉用具を選定

 私たちケアマネジャーは利用者ができる限り自分の力で生活できるよう、様々なサービスを組み合わせて、その人に合ったプランを立てています。介護保険制度には訪問介護やデイサービスなど多数のサービスがありますが、福祉用具貸与・住宅改修というのは、利用者自身がもっている「できる能力」を最大限生かして、自立した生活を支える重要なサービスの1つです。
 しかし、福祉用具と言っても車いすや介護ベッド、手すり等種類が豊富で、またメーカーによってもその機能・特長は異なります。そこで連携する上で欠かせないのが、数多くある福祉用具の特徴や注意点を熟知している福祉用具のプロフェッショナルである「福祉用具専門相談員」です。

 福祉用具を選定する際に退院時からの支援であれば、最初に行うのが、利用者が戻る自宅の住環境整備です。病院と異なり自宅には段差や家具など様々なバリアがあります。そこで、利用者が自宅に帰った後も安全に暮らすために、家屋のバリアの状況や、利用者の身体状況に合わせた生活導線などから必要な福祉用具の検討する「家屋調査」を福祉用具専門相談員などと共に行います。
 家屋調査では▽階段・段差の有無とその高さ▽湯船の深さ▽トイレまでの導線▽扉の形状(引き戸、内外開き)―
―などを確認します。注意するポイントはたくさんありますが、転倒しない家づくりを第一に、必要な福祉用具や住宅改修の必要性について福祉用具専門相談員をはじめとする多職種で考えます。

 その人に合った福祉用具を選ぶ視点は様々です。歩行状態を確認する場合は自立歩行か、壁や手すりを使って伝い歩きをしているのか、杖などがあれば歩けるのか、などによって必要な福祉用具・住宅改修が異なります。
 このほか、手すりを検討する場合には賃貸住宅には工事を伴わないレンタル手すり、持ち家には工事が必要な取り付け手すりかレンタルを選べるなど住環境によって用具を考えることも重要です。

疾病に合わせた福祉用具選び

 住環境の他、利用者の疾病や身体状況も福祉用具の選で欠かせない情報の1つです。
 例えば大腿骨を骨折し、人工骨頭の置換をしている利用者にはベッドサイド手すりと固定用スロープを導入しました。人工骨頭を置換している人は脚の動かし方によっては脱臼しやすいため、体を動かす向きがポイントとなります。固定用スロープと組み合わせて段差を解消することで、転倒しにくく、かつ自分の力で生活できる環境整備に繋がりました。
 また、多発性骨髄腫により右足と鎖骨を骨折している利用者は電動車いすをレンタルしました。この方の場合の多発性骨髄腫は骨折のリスクが非常に高い疾病で足に負荷がかかるため医師からは歩行を制限されていました。しかし本人には外出意欲があったことから、最小限の力で動かすことのできる電動車いすを選定し、自立した外出も実現しています。

 一方で、福祉用具の選定・使用には、安全性への配慮が欠かせません。例えば、歩行が困難な人でも移動が容易に行える電動車いすは、操作を誤ると重大な事故に繋がり、被害者にも加害者にもなる可能性があります。そのため、選定する際は認知機能に問題がないか、レバーを操作できるか、充電など日ごろの整備を行えるかなど細かくチェックしています。福祉用具を選定する際はメリットとデメリットを伝えているので、決める際には参考にしてみてください。
 福祉用具専門相談員は利用者の生活や動きを把握し、福祉用具を導入した後にどのような生活をするのかイメージしながら選定しています。適切な福祉用具を選定することで、転倒リスクを最小限にして、安全な在宅生活に繋げることができます。
 また、最近はオーダーメイドの靴や、自助具など介護保険外でも便利な用具がたくさんあります。
 様々な福祉用具を活用しながら、皆様の希望する生活ができるようこれからもサポートしていきます。
【著者略歴】
2011 年8 月マロー・サウンズ・カンパニーを設立し、東京都と千葉県で単独型の居宅介護支援事業所を6カ所運営する。江戸川区ケアマネ協会理事、東京都ケアマネ協会理事などを歴任した他、厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」委員も務める。ケアマネジャー研修動画サイト「DiversiTV」を運営。

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