聴覚障がい、視覚障がいの専門ユニットがある特養/栗原道子(22)
神奈川県相模原市にある「よもぎの里 愛の丘」は、障がいがある人の入居、または障がいがあっても働きたいという人へ、窓を大きく開いている特別養護老人ホームです。
3階は医療対応を要する人(バルーンや胃ろうの人など)が30人暮らしており、4階は要介護3以上の人(定員30人)で比較的自分で動ける人の住まいになっています。
私は今まであちこち施設を見せていただいた中で、1ユニット9人定員のグループホーム内に1人か2人、視覚や聴覚に障がいのある人たちがいるところはありましたが、大規模な施設でこのような形をとっているところは初めてです。なお、神奈川県では同施設のほか、横須賀市の養護老人ホームで視覚障がい者を受け入れています。
見えない人は食事に時間がかかったり、方向転換がとっさにできないなどの特徴を持っています。糖尿病が進行して視力が弱った人と、生まれつき見えない人では、介護の仕方が違います。それらを踏まえて専門ユニットを設けた施設を開いたそうです。
開設するまでに障がい関係の研修に行き、実際のケア内容を学びました。時代と共にケアの内容や個人の感覚、考え方も変わってきているので、スタッフの年代は若い世代から70代までバランスよく雇用しています。就職希望の人には何をしたいかよく聞き、個々に適したところに配属する、8時間労働はきちんと守るなど運営側の努力と工夫も大変なことでしょう。
元・理系のエンジニアが介護の仕事をしたいと来た際は、機械相手のエンジニアが?とびっくりするようなきめ細かい優しい介護をしてくれたそうです。
ろうあのスタッフは、他の職員と交わって立派に仕事をしています。入居者個々にあわせて点字の音楽を流したり、インターネットで歌を流したり、障がいのある人向けに配慮され提供されているものをうまく活用しています。
聴覚障がい者のユニットには、居室ごとに緑色の回転灯が設置され、来客があるとインターホン代わりに点滅します。火災や地震などの緊急時には、非常放送の代わりにフラッシュライトを点滅させる仕組みになっています。
視覚障がい用のユニットには、手すりに点字が表記されています。このユニットは特にスタッフと利用者のコミュニュケーションを重視し、スタッフの声かけを多くしています。さらに全室インターネットと固定電話の引込み線があり、各ユニットには右利き用トイレと左利き用トイレも備えています。
1階の交流ホールのベランダからの景色は、まるで軽井沢のような眺めでした。夏には、このベランダで皆さん涼をとるそうです。5階にはセレモニー室もあり、ご遺体の安置や葬儀を行うこともできます。
同施設は全国から入居でき、身内がいなくても後見人制度を活用しても入居できます。「よもぎの里 愛の丘」=神奈川県相模原市南区当麻490-1、TEL042・778・7211。