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宮城県ケアマネ協「BCPの基本は普段力」

宮城県ケアマネ協「BCPの基本は普段力」

 小湊純一さんは、宮城県ケアマネジャー協会事務局長として3.11直後の安否確認から事後の対応に関わり、今後の災害への備えを警鐘してきた。社会福祉士として事務所を営み、県社会福祉士会副会長も務める同氏は、何よりも「普段力」が大切だと言う。

クラウド活用と広域支援の想定

 「ケアマネジャーのBCPは普段力。普段からの関わりがないと非常時に力を発揮することができない。その地域にネットワークができていれば、誰かが助けに行くことができる。災害の種類や規模が分からないだけに、災害が現実になると想定通りには進まない。連絡網を作っていても、日々の関係が築かれていないと役に立てることは難しいだろう」と、宮城県ケアマネジャー協会の小湊事務局長は、災害のBCPは日々の活動がものを言うと話す。

 「ケアマネだから救える命がある」。3.11の際に、多くのケアマネジャーが利用者に対して救出や安全な場所への避難誘導介助を行った。「要介護高齢者一人ひとりに担当ケアマネジャーがついていたことで、高齢者の安心感は大きい。津波の被災地では、ケアマネ自身が被災しながらも行方不明の利用者の安否確認に奔走していた。避難所でアセスメントも行った。介護保険制度があって良かった」と、3.11のあった2011年夏に、小湊さんは当時を振り返っている。

 その上で、3.11の経験から大事なことと語るのは、クラウドによるデータ管理。紙やハードディスクの記録は流され、潰れ、読めなくなる。

 宮城県気仙沼市では津波で介護保険の書類やデータが大方なくなってしまい、クラウドでの管理が進められている。PCもスマホも簡単にクラウドが使えるようになった。

 災害や支援が広域にまたいだのも、3.11だった。沿岸部が被災したため、宮城県への支援は山形県や秋田県などから届いた。ケアマネジャー協会や社会福祉士会では、両県の団体や事業所などとの災害時支援のネットワークが生かさせた。災害時だけでなく、認知症支援や低所得者支援などで弁護士会などとのつながりもあった。広域災害では、地域のネットワーク全体が被災している場合があり、より広域で対応を図っている必要があるという。「そうした支援はお互い様」と話す。

 「行政との連携や情報の共有は大切だが、災害直後は、行政に助けて欲しいと思わないこと。災害時に行政を当てにしては行けない。自分で何とかする気概がなければ、災害直後の安全は守れない」と、小湊氏。

 「災害時に効率的・効果的を求めるのは限界がある。効率が悪いという人は、災害支援をやっていない人がいう言葉だ」とも。利用者を守っていくこと、自らの命を守ること、責任をもって守ることの厳しさを小湊氏は話す。

 非常事態の中での日常の生活を守ること。コロナ禍においては、職員不足などにより施設介護などで日常活動が停滞する事態が起きている。家族の面会もなく活動の停滞が日常化し、要介護高齢者のフレイルや認知症が急速に進んでいるおそれがある。コロナ禍でのサービス継続をどのように行っていくのか大きな課題になっている。

 10年が経過した昨年、小湊さんは 「災害時の備え」 を作成した(囲み記事)。小湊さんは、「枚数は要らない。A4判の表裏ぐらいがよい。災害時のBCPは利用者との日々の関わりで決まる」と言い切った。

災害時に求められるケアマネジャーの判断と働き方

1.「普段力」が物をいう

 利用者のアセスメントをきっちりと行ってきたか、いざというときに頼りになるネットワークを築いてきたかなど、災害時に役立ってくれるのは「普段力」といい切ってよい。

利用者の危機と知る

 停電になると、どの利用者にどのような危機が訪れるのか、家族が助けに行けないのは誰なのか、介護サービスが途絶えることで健康状態が急激に悪化するおそれがあるのは誰か、クスリがなくなると重篤なリスクが予想されるのはどの利用者か、など普段のアセスメントが重要だ。救出や安否確認の優先順位決定の決め手にもなる。

頼りになるのはネットワーク

 ネットワークの力は、災害時には欠かせない要素。「助け、助けられる関係」ほど、災害時に頼もしいものはない。

2.非常時に通常時の考え方を持ち込まない

 普段力が物をいうとはいえ、災害が発生したら、「非常時モード」に切り替えることが必要だ。
 命を助けること、健康を守ること、通常時の手続きにこだわっている場合ではない。

3.応援を受け入れられる備え

 所属法人の業務に追われて、担当利用者の安否確認に行けなかったケアマネジャーが少なくない。介護施設で、入所者の介護を外部からの応援に任せることができれば、ケアマネジャーは利用者の安否確認にいち早く着手することができる。施設職員も、被災した地域住民の介護にあたることができる。

4.自分で判断する

「指示待ち」「マニュアルどおり」の仕事スタンスは、災害時に害を及ぼしかねない。
 いま何が起きているのか。どんな危機が迫っているのか、最優先することは何なのかを考え、自分で判断することが重要だ。
 平時におけるケアマネジャーの業務スタイルにおいても、「自分で判断すること」を習慣化している必要があるのだろう。

5.課題分析力

 課題分析力は、ケアマネジャーの専門性のひとつ。避難所などで、自分が担当する利用者以外の高齢者などに対して、課題分析力を発揮する場面が訪れる。心身状態の把握、介護力の見極め、本人の意向・家族の意向などを、初対面で短時間でアセスメントし、その後の支援の方針を決定しなければならない。

6.聴く力

 聴く力もケアマネジャーの専門性。被害が大きくなればなるほど、「話すこと」を必要とする人が増えてくる。面接のエキスパートといえるケアマネジャーが聴く場合は、癒やしの効果も期待される。

7.ICTなどの備え

 災害に備え、ICTの導入が進められる地域が増えている。地域のケアマネジャー協会などを通じて、ぜひICT活用の当事者として参加していただきたい。

8.自分の命を守る覚悟

 目の前にいる利用者に手を差しのばさないと命が救えないという、究極の選択を迫られる状況がある。
 「自分の命を守る覚悟をもつこと」。自分の命を守るという行為は、苦渋の選択の中で下される。

(シルバー産業新聞2022年3月10日号)

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