新カリキュラム改定 3つのポイント / 石山麗子(53)

新カリキュラム改定 3つのポイント / 石山麗子(53)

新カリキュラム改定 3つのポイント / 石山麗子(53)

介護支援専門員法定研修の改定内容が確定した。介護保険最新情報Vol.1143と1144では、研修実施要綱とガイドラインが示されている。

 各科目のカリキュラム(案)とガイドライン(案)が示されたのは昨年4月、局長通知公のちょうど1年前だった。厚生労働省は、パブリックコメントも実施し、国民の意見を踏まえつつ慎重に検討を重ねてきたといえる。

 新カリキュラムは2024年度から適用される。筆者は現在の法定研修の検討が行われた13年度のカリキュラム検討委員会に続き、今回の改定でも委員として参画させて頂いた。今回はその経験を踏まえつつ、改定のポイントを解説する。新カリキュラム改定のポイントは3つである(表1)。今回はそのうちの2つにフォーカスする。

 最大のトピックスは、適切なケアマネジメント手法が導入されたことだ。介護支援専門員法定研修は全6課程である。そのうち主任介護支援専門員研修を除く5課程に導入される(表2)。法定研修は全国の介護支援専門員の資格を保有し続けるすべての者が受講する、そこに適切なケアマネジメント手法が導入される意義は何か。

 現在、ケアマネジメント・プロセスは明示されている。とはいえ、各プロセスの具体的視点、実行方法、判断と行動の根拠は体系化されていなかった。つまり、経験的に実行し、その状況を説明できても、仮説や根拠の説明を求められると回答に窮するケアマネジャーは少なくなかった。

 適切なケアマネジメント手法は、これまでに全国のケアマネジャーが蓄積してきた経験知と既知の根拠をもとに、生活支援の観点から整理し体系化したものだ。法定研修では、適切なケアマネジメント手法という科目が一つ増えるのではなく、演習の大半の科目に溶け込んで、学習するようプログラムされている。 

 実はもう一つ大きな動きがある。この手法に準拠した課題分析標準項目(=アセスメント項目)の見直しに関する検討も並行して進められた。筆者はこちらの検討会の委員でもあった。今後は適切なケアマネジメント手法が日本の高齢者に対するケアマネジメントの基礎となり、ケアマネジャーはもちろん、多職種や行政との共通言語になっていくとみている。

 2つ目のポイントである。適切なケアマネジメント手法以上に強化されたのは、介護支援専門員の倫理である。すべての研修課程にセットされ強化された(表2)。今回の改定の考え方は、研修のスリム化を目指し、スクラップ・アンド・ビルドすること。そのなかで倫理が新設、又は時間増となったことを見れば、いかに倫理の重要性が高いかをご理解いただけるだろう。

 ケアマネジャーの業務は元来、各所との調整であることから葛藤が生じやすい職種である。さらに今後は認知症の方、独居で身寄りのない方が増加する。看取りへの対応も一層求められる。意思決定支援の場面に携わる機会は増加していく。意思決定支援では、利害が絡み合うことも珍しくない。そうした調整の中核的存在として、倫理的な気づきを覚え、どのように対処できるかは他の職種以上に問われる。専門職として倫理的に対応することは、個人の感性や経験だけで対応するものではない。専門的な学習とトレーニングの継続が不可欠である。

 適切なケアマネジメント手法は「尊厳の重視と意思決定支援」から始まり、手法の随所と関連している。要すれば、倫理の学習なくして適切なケアマネジメント手法のみを習得、実行することは不可能である。法定研修だけでこれらを身につけることは難しい。法定外の、地域での研修などを企画し、意図的に学んでいく姿勢が求められる。2023年度はそうした足場固めの年である。

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