災害対策・経営努力が求められる新たな時代に

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災害対策・経営努力が求められる新たな時代に

 熊本県老人福祉施設協議会(跡部尚子会長)は1953年に設立、今年創立70周年を迎える。県内の老人福祉施設を中心に従業員の資質向上、処遇改善などを目指し活動する。

368施設加入 資質向上目指す

 当協議会は53年に前身となる団体が設立され、93年に熊本県老人福祉施設協議会に改称した。現在、県内の老人福祉施設を中心に368施設が加入している。

 行政や自治体との意見交換や要望書の提出を行い、職員の資質向上のための研修も企画する。また、近年頻発した災害への対策・支援にも取り組んだ。

 行政からの信頼も厚く、会員への情報提供など相互関係を築いている。

交付金配布も経営は厳しい状況

 近年の物価高騰は施設経営にも打撃を与えている。

 会員からも水光熱費や、おむつ代・食費などが経営を圧迫しているとの声が聞かれ、昨年11月に県老施協として行政に要望書を提出した。

 今年に入り県より、国の交付金から施設向けの支援金配布がある旨が通達され、1月20日から2月末日まで申請できる。

 入居者が100人規模になると、月々の電気代だけでも百数十万円かかる。

 とれる対策は、電気や水道の無駄遣いをなくしたり、おむつやリースの適正使用を促す程度。もともと贅沢に使用していた施設は多くなく、対策は難しい状況にある。

災害対策地図が活躍 被災施設へ人員派遣も

 2016年の地震災害はだれも予想しておらず、断層の近くの施設では天井が落ちたり、地盤沈下の影響を受けるなど特に被害が大きかった。

 被災を契機に防災意識が向上し、地震後に県全域の会員施設の所在地地図を作った。施設間の位置関係がわかり、特に20年の豪雨災害で役立った。

 水害が起きると、被災施設へ到達することが困難になる。移動ルートの検索や、高速道路のインターチェンジ付近の施設に県内外からの物資支援の拠点を作り、そこから各施設へ搬送する仕組みの構築に活用した。

 豪雨時には被災翌日に、当協議会の副会長が現地に入って対策会議を開き、私を含め現地で視察を行った。
居室が浸水し、利用者がデイホールいっぱいの状態で過ごしていたり、車が使えない、居室の改修に時間がかかるなどの声が聞かれた。

 また、職員自身が被災しており、自宅の片付けと入居者のケアを両立しなければならない困難な状況にあった。
20年の豪雨災害の時は、新型コロナ感染が蔓延する状況だったが、本協議会の災害支援チームから、特に被害の大きかった3施設へ1日当たり3~4人、1カ月間の人員派遣を行った。

 これに関連し、BCP策定に関する資料を配布し、これまで研修会も2回開催した。県内の圏域ごとの研修もあり、当協議会からブロック助成金も出している。

入居者確保が深刻な課題

 経営面では、入居待機者不足が課題だ。

 特養への入所には要介護3以上の縛りがあり、利用者が有料老人ホームなどに入居するケースが増え厳しい状況にある。

 熊本市は政令都市だが現在待機者がほぼいない。これは、どのようにして社会福祉法人として生き残っていくのかという新たな問題だ。施設の設立時は、満床近くで事業計画を立てており、良いケアのためには手厚い人員配置を行うため、人件費率は7割近くになる。

 稼働率が高くないとコストを補填できず、入居者の幅をひろげるなどの施策がないと競争が困難だ。

 一方で、私たち自身、多くの人に利用してもらう努力も必要であり、昨年10月には県内ショッピングモールなどで、会員施設の入居者や職員の写真を展示するフォトコンテストを初めて行った。地元の人に特養があることを知ってもらい、安心して利用してもらえるよう願っている。

 当協議会としても、これからは将来の施設経営に向けた研修を行い、問題提起もしないといけない。耳が痛いような勉強も必要な局面に入っている。

 先を見据えた法人育成が、職員のモチベーションにも繋がるのではないかと期待している。(談)

(シルバー産業新聞2023年2月10日号)

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