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東京都八王子市の地域支援事業

東京都八王子市の地域支援事業

 2016年3月から総合事業に移行した東京都八王子市では、現在、自治体独自の多様なサービスが整いつつあるという。住民主体のサービスを中心に、地域支援事業について、高齢者いきいき課の吉本知宏課長(写真左)と、辻野文彦主査に話を聞いた。

八王子市の「通いの場」の捉え方
 15年度に地域支援事業の改正があり、その頃から高齢者の通いの場の選択肢を増やす方向になってきた。八王子市はもともと高齢者のサロン活動は盛んだった。17年度では、民生委員は449人、NPO法人は279、高齢者サロンは140カ所あった。 

 全国的に「通いの場」というと、高齢者のサロン、体操教室をイメージするが、八王子市は、大前提として「高齢者の方が社会参加できる場」と考えている。サロンだけでなく、ご自身で行かれる趣味の教室、市場サービスとして提供されるスポーツジムなどを、高齢者の日常の活動が活発になるのであれば、通いの場と定義してもよいと考えている。通いの場は、数としては把握していないが、視野が広がったことで着実に増えてきている。

介護予防の考え方は多様性を重視
 介護予防に資する、という考え方については、いろいろな捉え方があり、体力がつく、健康な状態が維持される、それがエビデンスに基づいて評価される、という場合もある一方、人と交流することや外に出ることで気持ちが上がる事もりっぱな介護予防だと考えている。楽しみに参加するのも介護予防のひとつ。行きたいところや楽しみはその人によって様々。つまりは多様性を重視し、自分の望む暮らし方の実現を支援するのが自治体の仕事だと捉えている。

 エビデンスについては、身体的な測定値だけとは考えていない。とどのつまりは幸福感で、幸せかどうかという、主観的なところも評価の対象にしている。実は、昨年度から75歳以上の方で、介護認定を受けていない人に対して、アンケート調査を実施している。その中で気持ちのことを聞くようにしている。気持ちの上で豊かになった、安心できるようになった、に重きを置いている。これは、基本チェックリストをベースに独自の質問を加えて作成したもので、今年度は、そこに通いの場という項目を織り込んだ。集計が終われば、どのくらいの方が通いの場を利用しているかが分かる。

 コロナ禍では、全体的に参加は控えめになっている。1年前のアンケートでは、家の中にいることが多くなったという方が全体の4割いた。横になって居る時間も増えたという回答も多かった。横になって居る時間が増えたということは、今は認定を受けていないが、介護が必要になる予備軍かもしれない。特にこういう方を対象に、体操や趣味活動、友達との交流など、感染対策をしながら活動量を増やしていくようアナウンスしているところだ。

総合事業の訪問B型サービスが33カ所に拡大
 現在、住民主体による訪問型サービス(訪問B)は33カ所ある。実際に活動している割合も高い。これは全国的にもめずらしく、この仕組みを他の自治体に話す機会も増えている。

 八王子市でこの事業への参加が多いのは、行政がこれやって、あれやってとサービスを押し付けるのではなく、住民のやりたいことが実現できるようにフォローしている点が大きいと思う。住民の活動が地域にとって助かる活動であるし、参加される方が自分の介護予防にも繋がっているなら、活動そのものを市は応援しましょう、というスタンス。その結果、活動が介護の力になっているかもしれないし、介護給付費の削減にも繋がっていくかもしれないが、市としては給付の抑制を目標にはしていない。あくまでみなさんの“出来る範囲”の活動を応援するのが八王子スタイル。そこが馴染みやすく、活動が増えている要因の一つだと捉えている。

生活支援コーディネーターとの連携がポイント
 自治体としては、住民の活動団体があったらまずは見に行くことにしている。21に分かれている日常生活圏域に、生活支援コーディネーターが各1名配置されている。その活動を見て自治体事業の主旨に合っており、かつ、費用面で運営課題が生じていることを確認した際、内容を説明し、登録(補助)申請に繋げていく。今やっている活動を工夫すれば充実できる、ということを助言し、自治体事業に繋げることもある。自治体はあくまで地域活動の主体ではなく伴走者。

 館ヶ丘団体にある地域食堂の「たてキッチンさくら」さんは、昔から通いの場を中心とした生活支援をしているのを知っていた。自治体の助成で訪問による生活支援もやってみませんか、とお声掛けをしていた。コロナ禍で、訪問してお弁当を届け、見守りもする、という活動が増えてきたので、その活動が自治体事業にマッチしてきた。そして、申請に繋がり7月から事業に協力して頂いている。

 キッチンさくらさんは、住民の信頼関係が厚く、住民同士の交流も活発。もし住民の誰かが身体が具合悪くなった時、一番早くキャッチできる。それがキッチンさくらさんや、その隣にある自治会さんの活動だと思う。一番住民に近い、貴重な存在だ。

総合事業へのバリアを払拭するよう努めている
 自治体の事業を行うことで、高齢者の介護の担い手というイメージが強くなると、どうしても怖い、不安、といった声がよく聞かれる。市としては、専門職の仕事を地域に担ってもらうのではなく、出来ることを出来る範囲で協力頂ければ大丈夫、と伝えている。そして、難しい場合は公的機関と連携が取れる仕組みを整えている。その要になるのが生活支援コーディネーターで、団体の立ち上げも支援するし、自治体事業に繋げるところも支援し、活動後もしっかりフォローする。そこも、訪問Bが広がった要因だと捉えている

地域支援事業の今後の目標
 訪問型サービス(訪問B)については、23年度末には50団体まで増やしたい。しかし、課題も多く、特に担い手の高齢化が課題。団体は増えても、担い手は平均70代後半になっている。若い世代を取り組む次の手が必要だ。

 介護給付費については、住民主体サービスで抑制効果を出すことは考えていない。住民主体の活動は、ヘルパーの代わりを務めるのではなく、介護サービスではできない暮らしの困りごとを、住民ができるところをやっている。例えば、庭の草むしりなどだ。

 八王子市は介護保険料がすごく上がっているわけではない。総合事業の多様なサービスも揃ってきたので、給付費の抑制成果が出るのはこれからだと思う。短期集中予防サービスや緩和型サービスなどが出揃って、要は従来相当ではなく、自立に向けた多様なサービスの選択ができるようになってきているので、今後給付の大きな効果は期待できる。八王子市は昨年から通所の短期集中サービスをスタートした。要支援の方はまだまだ元気な人も多く、元の生活に戻れる可能性がある方も多い。今後、成果が出るのは第8期の後半くらいだと思う。そのあたりで地域支援事業全体の評価ができると考えている。

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