東京都 2040年に向けて健康長寿社会のモデル都市に
各地域の介護事情や行政独自の取組み、地域を支えている注目の事業者・サービスなどを紹介する特集を今回からスタートする。初回は東京都。
【高齢者像の変化】
【在宅の基盤整備】
各保険者が推計した介護サービスの見込み量の集計を19年と25年で比較したところ、居宅サービスの見込み量は、訪問介護が+15.9%、訪問看護が+35.2%、訪問リハ+27.2%、通所介護+17.1%、通所リハ+14.1%、短期入所+17.5%、福祉用具貸与+19.6%、住宅改修+19.4%などとなっており、特に訪問看護や訪問リハなどの医療系サービスが増加する見込みとなっている。
要介護高齢者の在宅療養生活を支えるのに必要な訪問看護については、管理者・指導者の育成や代替職員の雇用経費の補助のほか、都の独自事業として、認定看護師相当の指導者が配置された訪問看護ステーションを「教育ステーション」として指定し、そのステーションが地域の事業所に対して、同行訪問などを通じて指導・助言を行う事業なども実施している。訪問看護の整備が地域包括ケア実現の重要な鍵になると考えている。
【施設の基盤整備】
特養への入所申込者は、02年度から13年度までは4万人前後で推移していたが、入所要件が「原則要介護3以上」に見直された後の16年度調査では、3万717人と約3割減少した。その後の19年度調査では2万9126人と、前回調査からさらに約5%減少している。施設の基盤整備に向けた取組や在宅サービスの充実が入所申込者の減少につながっていると捉えている。
ただ、これから先も施設サービスを必要とする高齢者は増加していく。そのため30年度末までに、特養は6.4万人分、老健は3万人分、グループホームは2万人分の定員確保を整備目標に掲げている。都民に対して、必要なサービスが確保されるよう、これからもしっかりと基盤整備を進めていきたい。
【介護人材の確保】
東京都の場合、人口は多いものの、多様な業種があって働く選択肢が広く、業種間の競争が激しいため、介護人材の確保は容易ではない。こうした実態も踏まえ、中長期的な視点で、人材確保・定着・育成対策を総合的に実施していかなければならない。
また、介護現場の革新を進めていくことが、質の高いサービスを継続的に提供できる仕組み作りに役立つだけでなく、介護業界のイメージを変え、人材確保にもつながると考えている。
このほか、外国人介護従事者の受入れ環境の整備などにも注力していく。
【地域包括ケアの実現に向けて】
主な取組としては、短期集中予防サービスに先駆的に取り組む保険者を後方支援し、効果的な介護予防が展開されるよう推進していくほか、コロナ禍でのフレイル対策として、オンラインツールを活用した介護予防・フレイル予防活動に取り組む区市町村に対し、補助率10分の10の支援事業などを行っている。このほか、東京都の強みである活発な企業活動、豊富な経験と知識を持った多くの人たちの力を活用し、地域活動を活性化させる「東京ホームタウンプロジェクト」なども実施している。
2040年に向けて高齢者が輝く健康長寿社会のモデルとなり、「Cho-ju(長寿)」の言葉を東京から世界の共通語にしていきたいと考えている。
(シルバー産業新聞2022年1月10日号)