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江別訪問診療所 在宅患者300人を支える

江別訪問診療所 在宅患者300人を支える

 札幌市の東に隣接する江別市に、訪問診療専門のクリニックがある。社会医療法人関愛会が運営する「江別訪問診療所」は常勤医師4人で24時間・365日の対応を行う強化型在宅療養支援診療所。「へき地医療支援センター」として週1回、道立江差病院へ外来医師の派遣も行っている。

 訪問エリアは遠いところで新篠津村や当別町。いずれも訪問16㎞圏域を超えているが、各地域に訪問診療を行う診療所がない。「江別市内も、がんの看取りなど、重症患者に対応できる施設が不足している」と院長の日下勝博氏。地域の核となる在宅医療、そしてへき地医療を充実させるしくみをつくりたいとの思いで同診療所を立ち上げた。

 現在、訪問診療の患者は300人強。個人宅が7割、施設が3割で、要介護認定を受けている人が大半を占める。札幌市内の基幹病院から退院したがん末期患者、人工呼吸器が必要な重度者などが中心。看取りは年間130件にのぼる。他には、容態は安定しているが病院への移動手段がない人、引きこもりや通院拒否などのケースもある。

在宅医療を地域の特色に

 (20018)

 日下氏は、地域医療が抱える課題の一つに看取りを挙げる。「病院での看取りを前提とした場合、25年以降は圧倒的に病床が不足する。施設やサ高住は看取り対応にかなりバラつきがある。在宅なくしては今後の医療は成り立たないだろう」。

 在宅医療を中心に、病院は後方支援を行う。こうした構図が今後増えてくると同氏。「設備・環境が整う病院も在宅医療を育成する場として重要。在宅と病院の間で良い教育循環がつくれれば」と述べる。

 昨年は訪問看護ステーションを開所。今年4月からは訪問介護、居宅介護支援の運営も開始する。

 同氏は在宅におけるプライマリケア、総合医の重要性を説明する。「高齢で複数疾患をもつ患者の場合、各診療科では担当の疾患を治すことしかできない。総合医は疾患だけでなく生活全体を見て優先順位をつけ、本人と一緒に『生活の目標』を立てるマネジメントに専門性が発揮される」。

 生活の目標は「自分のやりたいこと」が大前提。「それを主体的に考えるのが苦手な人も多い。会話を通じてそれを引出していくことも総合医の役割の一つ」(同氏)。

総合医のキャリア形成

 さまざまな専門医がいる病院だと総合医の専門性が分かりづらく、人材育成の土壌も整っていないと同氏。「そのため都市部、地方部でプライマリケアの質が均一になっていない」と指摘する。

 研修でへき地・離島医療を経験し、総合医を志すきっかけとなった同氏。10年間勤務した江別市立病院ではへき地への医療支援を行いながら総合医の育成にも注力した。しかしその後、病院経営が悪化し道半ばでの方針転換を余儀なくされた。

 「医学的知識だけでは続かない」。国際医療福祉大学で経営論、組織論、リーダーシップ論を学び、40歳でMBA(経営学修士)を取得した。「地方に若い人材、特に総合医が集まるには、成長やキャリア形成を見える化することが必須」。教育だけでなく、培った力を発揮する場、評価するしくみを確立させたいと意気込む。

(シルバー産業新聞2022年3月10日号)

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