総合事業は短期集中サービスを軸に展開
山口県防府市の地域支援事業は、21年1月から総合事業に短期集中サービスを取り入れ、これまでのサービス体系を大きく見直した。
こうした施策を専門職や市民が共有するには、会議体の形成が重要になる。また、地域に出るには資源と人がいる。それぞれに工夫のある同市の地域支援事業だが、まずは総合事業から紹介したい。
20年度までの総合事業
総合事業を変更した背景
実際、認定の申請理由については、「病院で申請するように言われた」「地域の人に申請しといた方がよいと言われた」という理由で何となくする申請もあった。持っていれば安心という「お守り認定者」もいた。認定者には軽度者で通所の利用者が多く、悪化する傾向も見られた、と高齢福祉課の三輪徹郎氏は説明する。
また、地域支援事業の給付費を見ると、全体で18年度の102億円が、25年には120億円に膨らむ。そのうち市税の負担は12.8億円から15億円に。介護保険料は5779円から7280円に上がってしまう。地域包括ケアの「見える化システム」を使って市は推計した。
短期集中予防型通所サービス
サービスの内容は、これまでの通所系事業所を利用して、週1回、2時間程度、全12回と1回の訪問サービスを提供する(送迎あり)。利用者負担はなく、地域支援事業費で全額負担。
短期集中サービスの流れ
この点について市は、「要介護等の認定を申請する窓口から、困り事を聞き取る窓口に変えた」と説明する。実際〝お守り認定者〞の削減効果も大きかったそうだ。
包括での相談後、包括のケアマネとリハ職(PTかOT)が全員の自宅を訪問してアセスメントし、短期集中サービスに繋げる。アセスメントで気を付けているのは、「元の生活を取り戻す」ための提案をする点。そのためには、通所時だけでなく、それ以外の生活全体を視野に計画を立てる。利用者も市が準備したセルフマネジメントシートを活用して、日々の生活やリハビリを記録する。「早く元の生活に戻りたい」「地域で活動したい」と願い、自らセルフマネジメントに励む。「短期集中サービスは、「リエイブルメント」を意識している」と三輪氏は指摘する。
ここで言う元の生活や地域の活動は、例えば散歩やお出かけ、趣味なども含み、居場所やサロンだけを指さない。全12回の通所と1回の訪問サービスでは、後半にかけて元の生活をイメージして取り組む。元の生活をイメージし、そこに支援内容をフォーカスすることで、短期間でも効果が見込めるということか。
実施した成果については(21年11月時点)、154人が短期集中サービスを利用し、サービス終了者82人(継続者除く)のうち、50人が改善し、元の生活に近い活動をしている。市では60.9%の改善率だと説明。高齢者の「幸せます状態」は広がっているようだ。
次回は具体的な事例を挙げて紹介したい。