「好きなもの食べたい」を実現するターミナル期の食支援
社会福祉法人芦別慈恵園(北海道芦別市)の特養「芦別慈恵園」では最期まで食事を楽しむための看取り期の食支援に取組んでいる。状態を的確に把握するためターミナル評価表を用いて「予備軍→プレターミナル期→ターミナル期」に分類し、状態に合わせた食事提供や、思い出のレシピ作成に取組んでいる。
食事はすべて施設内で作っており、入所者の食形態に合わせて「常食」「やわらか食」「テリーヌ食」を提供している。
管理栄養士の村上由佳さんは「食事を楽しんでもらうためには、おいしく調理する技術も大切。定期的に調理実習などを行っています」と話す。
同施設では、独自のだしのレシピや食べやすい食材の切り方などの調理法を蓄積し、誰もがおいしい食事を作れる体制を作ってきた。「食べやすさだけではなく、風味や舌ざわり、見た目も食事を楽しむ重要な要素です」(村上さん)
そして、食べられるときに好きなものを食べてもらえるよう、身体状態からターミナル期への状態変化を把握するため、2010年に栄養ケアチームを立ち上げ、科学的介護に基づく栄養ケアの取組みを開始。月1回の会議や日々のミールラウンド、ターミナルの方針検討などを行っている。
ターミナル評価表で最適なケアを提供
村上さんは「ターミナル期が近づくと、全量を食べていても、体重が減少していきます。体に負担のかからない食事内容に変え、思い出レシピの提供に向けた準備や評価を多職種で行います」と説明する。
ターミナル期の食事の工夫では、▽体に負担がかからないよう1食のエネルギー量を600kcal程度に減らす▽食事回数を減らす▽食欲の低下に合わせた食事提供――に変更する。
「利用者の状態に合わせて、最適なケアを提供するためにも、データに基づく議論が大変重要だと考えています。また、安心・安全な食事提供のため、歯科医師や歯科衛生士と連携した口腔ケア・嚥下機能訓練も行っています」(川邊施設長)。
食事を楽しむ「思い出レシピ」や「肉の日」
このほか、入所者の家族も交えてジンギスカンを提供する「肉の日」イベントを開催。地域の精肉店が高齢者でも食べやすいようにと、味付きジンギスカンのひき肉を用意してくれている。
屋外での食事や、ノンアルコールの提供など、普段と異なった雰囲気での食事で、喫食率が増える人もいるという。
川邊施設長は「入所者の希望を叶えるケアを今後も取組んでいきます」と語った。