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虐待に至る入所施設の構造的な問題/中山清司(184)

虐待に至る入所施設の構造的な問題/中山清司(184)

 今年7月20日、強度行動障害支援の関係者に衝撃的なニュースがもたらされた。 福岡市や久留米市を拠点に活動している「NPO法人さるく」の理事長(ここではNと呼ぶ)他1名を、中学生男児への逮捕監禁・強要容疑で逮捕したというのだ。

 この理事長Nは、強度行動障害のカリスマ支援者として全国各地で講演や実地指導を請け負い、強度行動障害は短期間にすべて解決できると吹聴し、実際にN自らが家庭に出向く訪問セラピーでは「3日で100万円」の療育費を家族に求めたという。

 百歩譲って、Nのセラピーによって強度行動障害が改善するならまだしも、その実態は、結束バンドで当事者の手足を拘束し、暴れたら殴るぞと脅し、Nが運営する事業所に強制連行し、密室で暴行を加えていたというから始末に負えない。

 Nを強度行動障害に対するカリスマ支援者として持ち上げ、はからずもNの宣伝に加担してきた医療や福祉の専門家が何人かいたようだ。彼らの目も曇っていたという意味で、業界内での自浄作用・チェック機能の不全も嘆かざるを得ない。

 前回、障がい者虐待に関する入所施設の構造的な問題を5つの要因から整理したが、本事件も同じ問題をはらんでいる。

①施設の閉鎖性:これまでNの行為の実態は隠されていた。N自身が、自分は暴行などしていない、専門的な療育だと主張するだけであり、客観的にチェック・評価されることはなかった。

②対応困難な利用者の存在:既存の施設やグループホームはどこも受けてもらえず、在宅生活で家族のみが強度行動障害の子どもの世話をし続ける現実。そこにNは付け込んだ。

③職員の孤立と人材育成の軽視:Nは専門用語を駆使しもっともらしい理論・理屈を並べているようだが、報道に接する限り、Nおよびその部下の支援スキルは相当劣化している(だから、Nらは拘束や暴行に安易に移行する)。

④管理者の不在:N自身が管理者であり、自らが率先して虐待をしてきた。できれば、周辺の福祉関係者やNを知る専門家の介入や修正がなかったのかと悔やまれる。

⑤利用者・家族には選択肢がない:このようなNの行為が明らかになった今でも、在宅で苦しんでいる強度行動障害の人たちとその家族を受けとめるところが他になく、Nに頼らざるを得ないと擁護するような主張がネット上に散見する。

 実は、Nと筆者は、25年ほど前になるが同じ入所施設の同僚であった。その後、Nは九州で独立開業し今に至るわけだが、そのどこかで道を外れてしまったのだ。

 個人的にも、Nが更生することを強く期待する。そのためには、これまで自らが犯してきた虐待行為と世間を欺いてきた言動を白日の下に晒し、特に直接的に被害にあわれた当事者・家族への謝罪と償いに、何よりも先に取り組んでもらいたい。

 今回の事件をきっかけに、筆者も含めNとかかわってきた関係者・専門家たちは、なぜN の行為を見逃し、あるいは黙認し追認してきたのか深く反省すべきだ。中には積極的に推奨し、増長させてきた部分もあっただろう。そういう業界内の馴れ合いの中、Nは自信を深め自らの行為を正当化してきたのである。

 本事件は、強度行動障害の構造的な問題を象徴する、氷山の一角に過ぎない。求められる人材育成の仕組みはどうあるべきか。Nを反面教師に、私たちが取り組むべき課題はとてつもなく大きい。

(シルバー産業新聞2022年8月10日)

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