「構造化」は刺激を排除するやり方? ④
前回説明したとおり、強度行動障害の入所者に施錠対応し、それを「構造化」という支援用語を使って正当化する施設が少なからずある。その背景としてすぐに思い浮かぶのは、スタッフ配置の少なさとトレーニング不足、施設・建物の老朽化、居室をはじめとする狭い居住環境、脆弱な日中活動プログラムなどだ。つまり、強度行動障害に対するハード面・ソフト面の対策が圧倒的に弱いということだ。
不適切な対応招く慢性的な人員不足
ここにベッドを入れ、机やタンス、テレビを入れたら、ほとんどいっぱいになるだろう。人員(スタッフ配置)も細かく決められているが、要するに、施設を経営するにあたっては、なるべくこの最低基準で運営しようとするのだ。
というのも、収入にあたる、利用者支援に対する給付費(報酬単価)もまた国が規定しているため、安定経営を目指すなら、支出(人件費や設備費)をなるべく切り詰めようとするからだ。その結果、スタッフの待遇を大幅に改善することはできず、実際、どこの施設も慢性的な人員不足に陥っている。
現場の理屈で言えば、強度行動障害のある入所者の居室にカギをかけ、長時間そこで過ごしてもらう。そのことで、とりあえず他の入所者の生活は安定し、日々のスタッフワークも何とか維持できる――ということで常態化していくのだ。
機能的に見れば、他にやることがない中、自分の身体を使って何とか過ごそうとするのだろう。あるいは、極端に活動意欲が低下し、半ば寝たきり状態のようなケースも出てくる。施設の限られた条件の中、強度行動障害の悪循環の連鎖を断ち切り、より良い支援を見つけていかなければならない。
「施錠対応・外部からの刺激を減らす」に代わる、本来の「構造化」のアプローチを、次回、提案したい。