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地域包括ケア 障がい福祉の挑戦①「住み慣れた地域で」から「希望する地域で」へ

地域包括ケア 障がい福祉の挑戦①「住み慣れた地域で」から「希望する地域で」へ

 2025年構築をめざす地域包括ケアシステムの中で、障がい福祉サービスはどう展開するか。指定が広がらない「共生型サービス」(2018年創設)の一方で、「放課後デイ」に企業参入がつづく。昨秋国連から日本の精神科病院の強制入院や成年後見制度の代理意思決定の仕組みについて、当事者の意思が反映されていないと廃止勧告が出された。国際医療福祉大学大学院教授石山麗子氏、全国老人福祉施設協議会会長平石朗氏、厚労省障害保健福祉部長辺見聡氏に率直に話していただいた。

地域包括ケアシステムの中の障がい者

辺見 広島県御調町(現尾道市)で始った地域包括ケアシステムは医療と介護が連携し、住み慣れたまちで住み続けられるように地域づくりを進めている。高齢者は「住み慣れた地域で」だが、障がい者は年齢の幅が広く人生のステージもまちまちであり、「希望する地域で」安心して暮らすことを目指している。医療の関わり方は難病と精神でも違うし、生活支援の場面の障がい特性などにより異なっている。地域包括ケアにおける障がい者支援は、そうした障がい者の多様なニーズへの対応が課題。お二人は地域包括ケアシステムをどのように捉えられているでしょうか。

石山 日本福祉大学元学長の二木立さんは、地域包括ケアは地域のネットワークづくりだといわれた。医療と介護は、地域医療介護総合確保基金の活用もあって推進されたが、高齢者領域で留まっている印象がある。そこに障がいが入ってくるというマネジメントがどこまで効いているのか、課題に思っている。

平石 私は大学を卒業して障がい者の無認可作業所からスタートした。重い障がいのある人は教育も保障されず、時に生存権すら危ぶまれる状況も見受けられたので、そうした社会参加を阻害する要因を除いて、その人らしい生活を実現していくよう支援に努めてきた。障がい者はそれぞれのステージで様々な個別の課題があり、地域包括ケアシステムが障がい者の多様なニーズに対応できているとは言い難い。

厚労省障害保健福祉部長 辺見聡氏

厚労省障害保健福祉部長 辺見聡氏

地域の軸になる就労支援

辺見 障害者総合支援法には、一般就労が難しい障がい者に対する就労支援として、雇用契約に基づく就労継続支援A型と、雇用契約によらず生産活動を行うB型がある。21年に、障がい者就労支援が伝統工芸から地場産業、地域課題解決などに関わる30事例を紹介する「地域産業連携ガイドブック」を作った。その中に、高齢者支援と障がい者の働く場を組み合わせた、誰もが集まる地域の居場所づくりがある。小規模多機能の隣に就労継続支援B型のそば屋があって、双方行き来する事例も見たことがある。障がい者就労が地域包括ケアシステムの基盤となる地域づくりに役立っている例だ。地域包括ケアの推進と障がい者支援の関係をどう見ていますか。

石山 19年から厚生労働科学研究で行った障がい福祉の研究の成果の一部を反映された障がい者の生き方や家族の生活を支える相談支援専門員の研修プログラムの改定が行われた。そこで介護保険の介護支援専門員との連携に関する科目ができた。高齢と障がいという縦割り制度の中で、ケアマネジメントでつなぐ人材育成を進めることになった。
 一方で高齢領域の方は、24年度から介護支援専門員の法定研修が始まるが、相談支援専門員との連携という科目は設定がない。というのは、ケアマネジャーは障がいだけでなく、難病もヤングケアラーや仕事と介護の両立、生活保護など様々の対応を求められている。それらをまとめて、地域共生社会という科目で対応している。

平石 私は19年に全国老施協会長に選任されたが、この4年間は公益法人としてふさわしく、時代のニーズに対応可能な組織となるよう様々な改革に取り組んできた。「最後の一瞬まで、自分らしく生きられる社会へ」という「老施協ビジョン2035」を実現する道筋を考えたつもりだ。そうした改革が地域包括ケア推進の基盤整備につながると思う。

石山 地域で障がい領域とのネットワークができるためには、団体どうしや行政、役所の中の各部署が一緒に考えないと動いていかない。

平石 地域包括ケアを表す「高齢者は住み慣れた地域で」という目標は、教育や労働、生活などを自らの意思で選択しながら人生を送ってきた方が、高齢期にいたって医療や介護などの地域包括ケアが必要になってくる状況で発せられる言葉のように感じている。重い障がいのある方はまだその領域に達していないのではないか。

国際医療福祉大学大学院教授 石山麗子氏

国際医療福祉大学大学院教授 石山麗子氏

地域移行に欠かせない地域包括ケアシステム

辺見 精神障がいの分野では、地域の受け皿として特に地域包括ケアを重視している。施設や病院を出てまちで暮らそうという地域移行の課題があるからだ。病院・施設を退院・退所した後、どこに住むか。昼間は何をするか。さらに、精神障がいの人ならば、訪問看護、通院するクリニックとのつながりも必要。

平石 私が理事長を務める社会福祉法人では、身体や精神に障がいがあり、経済的な問題も含め、日常生活を営むことが困難な方を受け入れる救護施設を運営している。その関係で、精神科病院とのやり取りを日常的に行っているが、地域移行実現のために医療的な支援が必要な人も少なくない。脱施設化を進めるためには医療との連携は重要で、地域包括ケアは大前提になる。

辺見 昨年の精神保健福祉法の改正は就労支援の改正と一緒に取り組んだ。地域の力が必要という点は高齢者、障がい者支援に共通するが、一般就労を含め働くという点からの支援は高齢者支援とは違う視点も必要となると思う。

全国老人福祉施設協議会会長 平石朗氏

全国老人福祉施設協議会会長 平石朗氏

「精神科病院の強制入院は廃止すべき」国連勧告

辺見 昨年9月、国連から障害者権利条約(13年日本批准)の初めての対日審査があった。そこで、精神科病院への強制入院は廃止すべきとの勧告を受けた。障がい者権利条約の下、各国審査が行われる仕組みだが、障がいの有無にかかわらず自分のことは自分で決める、社会の制度を使うことが障がいを理由に禁止されない、だれもが平等に保障されなければならない、との考え方が根底にある。ほとんどの国が同様の趣旨から指摘を受けており、各国共通の課題でもある。

平石 私は学生時代に哲学を専攻していたが、ある日新聞で15年間納屋に閉じ込められ、ロープで縛られて育てられていたという子供が保護されたとの記事を目にした。自分はどう生きるかを考えていたつもりだったが、障がいのある人たちは生存権そのものが否定されている。そう考えて障がい者の現状を知るために大学のサークルの門をたたいたのが福祉の道に進むきっかけだった。そして卒業後は障がい者の社会参加に関与したいと思い、入所ではなく通所の作業所で働くことにした。しかし親が高齢になった時は生活を支える人がいないため、入所施設を作らざるを得なくなった。

多様性を当たり前に

平石 精神病院からの退院が進まない背景には、障がい者に対する根強い偏見がある。私も入所施設を建設する際に激しい反対運動に直面したが、それを機に地域を変える必要を強く感じ、こうなったら小さい通所施設をいっぱい作ろう、そこでお祭りをして地域の子どもたちが施設の人と接することにより、たとえ時々大声を出す人がいたとしても、それが普通なんだという地域に変えていこうという思いにいたった。その後、入所者の高齢化に伴い、重い知的障がいのある方でも当たり前に受け入れる特養の必要性に直面したので、設立に踏み切った。今もそうした営みが続いているが、それが実践家として一番大切な仕事だと思っている。 

辺見 国連障害者権利委員会の勧告は、本人の同意のない入院を廃止すべきとされているが、現行制度では措置入院と医療保護入院が該当する。昨秋、精神保健福祉法を改正し、医療保護入院に入院期間を設定することとした。入院時から入院期間を設定し、退院時期を共有しながら、医療機関が地域と連携して退院に向けた取り組みを行う。必要な場合は入院期間の更新もあるが、退院の時期に向けた計画的な支援が求められる。長期入院の理由として、「地域に戻るところがない」ことが言われてきたが、今後は入院時点から退院して地域に移行することを見据えた対応が必要となる。
 加えて、医師に入院理由の説明をしっかり告知してもらうことにした。文書を渡すだけでなく、説明をして渡す。改正法の附則では、本人の同意のない入院の在り方については当事者の意見を聞きながら今後検討していくとされた。きわめて大事な指摘である。いまの精神科病院の状況をみて改善すべき点は多いと思っている。

(次回、地域包括ケア 障がい福祉の挑戦②「ことばに隠された本人のニーズを読む」に続く)

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