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「気づきメモ」はSCの大事なアンテナ    宮下今日子

「気づきメモ」はSCの大事なアンテナ    宮下今日子

川崎市は生活支援コーディネーター(SC)を小多機(看多機含む)に配置して、介護予防事業に独自の試みを始めている。SCは、少し不安の出始めた高齢者を見つけ出す方法を模索し、実践に繋げている。今回は、「小規模多機能施設あさお」(医療法人社団早雲会)に勤める3人のSCに話を聞いた。

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画期的なツール「気づきメモ」

 SCの安岡雅子さんは、幼稚園教諭、専業主婦を経て、8年前に小多機「あさお」に介護職として入職。2年前にSCになった。住まいが事業所の近所で、地域の情報に明るかった。「バスに乗っていても、困っていそうな人に目が向くんです」と、すでにソーシャルワークが体に染みついている。
 この理由は、川崎市が「気づきメモ」(写真)というツールをSCに配布していることが大きい。安岡さんはこのツールを使って、町の様子を書き留めているのだ。安岡さんだけでなく「あさお」では、毎月10枚書くことを職員のノルマにしているという。例えば、横断歩道を渡る人の様子や、前と後ろにリュックをもって歩くおじいさんなど、ちょっと気になる人をメモしていく。「植え込みで、立ちながら用を足している人なども書いています」とあっけらかんと話す。役に立つか分からなくても、また、良かったと思うことでも、逆に心配になったことでも、とにかく書き留めているそうだ。

 こうして地域に目が向いてくると、地域の課題が見えてくる。川崎市麻生区は高齢化率が23%(人口約18万人)だが、団地も多く、坂道も多い。買物難民が大きな課題だった。現在、同区では小多機(看多機含む)が13カ所あり、4カ所にSCを配置し、定期的な会議を重ねている。行政はじめ、他の拠点や町内会などと一緒に話し合いを深めている。
 SCの仕事では、高齢者がコピー機の使い方が分からず、後ろに行列ができていた時や、商品の印字が読めず困っている時など、その場で手助けすることもできる。「やり甲斐を実感する時」だと安岡さん。SCは介護予防に資する力を確かにもっていると言えそうだ。

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予防から介護への連続性

 しかし、いろいろ支援していても、自立できる人ばかりではなく、介護になる人もいると安岡さんは日々感じている。管理者兼ケアマネで、SCでもある塚田牧子さんは、SCの活動から小多機に繋がった例を教えてくれた。
 Mさんは、認知症が出始めて、徘徊して保護されたり、モノとられ症状で警察が関与する事態も時々あった。包括が声を掛けても支援に繋がらず、心配になった包括からSCに依頼が来た。「あさお」では、何とかMさん宅に訪問ができて、話をする中で、ようやく受診に繋がり、介護認定もできた。今では週6日訪問し、服薬や安否確認が行えている。玄関先のたった10分だが、それがMさんには適しており、以前よりもずっと安定した生活が送れている。訪問介護事業所では難しい10分ケアも小多機なら柔軟に対応できている。また、利用者にとっても、相談役のSCとケアスタッフが同じ場合もあるので、利用者の安心感に繋がっているそうだ。

小多機にはやり甲斐あり

 ケアワーカー20年のベテラン・仲田聡子さんは、これまで、デイ、GH、訪問介護を経験し、小多機に来てからSCになった。
 仲田さんはこれまでの現場経験から、訪問介護は時間や内容に制限があり、決められたことしかできない窮屈さを感じてきたと明かす。しかし、小多機では、短時間の服薬確認、1時間の調理、通院の院内介助、お楽しみの場所への移動介助や同行もできる。本人の自立に資するケア計画のもと、ほとんどできていると実感。「今の高齢者が本当に困ったことに対応できている」と満足そうに話す。

 本当に必要な介護ができているという実感は、介護職のやり甲斐に繋がる。利用者が制度に合わせるのではなく、本人に制度が付いてくるのが本来の在り方だろう。小多機の人気はそこにあるのかもしれない。
 「あさお」は、介護予防の個別支援の取組に実績があると川崎市内では評価が高く、職員には地域と関わる大切さが周知されているという。施設内で完結せず、地域に目を向けることで包括的なケアが可能になる。
 川崎市の介護予防事業は、本人の生活のなるべく身近(小地域)に、市民を含めた支援者とケア専門職を置こうと模索しているようにみえる。その繋ぎ役という大役がSCなのだから、やり甲斐指数は高いはずだ。
地域住民と親しくなり、困っていたら手を差し伸べる。それは専門職の醍醐味でもあり、また人としても嬉しいこと。地域で最期まで暮らせるまちが見えた気がした。

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