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山形大学 3Dフードプリンターで介護食づくり

山形大学 3Dフードプリンターで介護食づくり

 3Dの設計データをもとに樹脂などを用いて立体物を製作する3Dプリンターが様々な業界で活用されている。山形大学理工学研究科では硬い樹脂ではなく、ゲルなど柔らかい素材を活用して食品を製作する「3Dフードプリンター」を開発。同じ見た目でも食感や栄養素の異なる食品を作ることができ、介護食や病院食への応用に向けて研究・開発が進められている。第一人者でもある機械システム工学専攻の古川英光教授に話を聞いた。

 摂食嚥下機能が低下した人にとって、家族や入居者たちが集まって食事をしているときに、自分だけペースト食など見た目が違う食事を食べることは心理的抵抗感があり、食欲低下にも繋がる。

 また、介護食を作る家族や職員にとっても、食事を作った後にミキサーにかけたり、内容に合わせてゲル化剤を調整したりするなど調理の負担も大きい。

 同じ見た目でも利用者ごとに柔らかさを調整した食事が作れれば、安心安全で楽しい食事が提供できるのではないかと考え、3Dフードプリンターを開発した。

 3Dフードプリンターの特徴は、▽かたさややわらかさを自在に調整できる▽栄養素・アレルギーなどを調整できる▽設計図をデジタルで作成するため、より細かな造形が可能になる――などが挙げられる。

メニューに合わせたプリンター活用

 我々が開発した3Dフードプリンターは3種類ある。まず1つ目は直径0.5㎜のノズルが2本ついており、そこに食品の素となる粉末やすり身等を入れると、作成した3次元の設計図をもとにプリントされる積層スクリュー式タイプ。次にレーザー照射によって澱粉を糊化するレーザー光照射バスタブ式と粉末式タイプの2種類がある。

 積層スクリュー式では2本のノズルに異なる素材(かぼちゃの皮と中身など)を入れることで、見た目や食感、風味が異なる1品を作ることができる。また、ニンジンの輪切りの設計図を読み込ませれば、見た目がより常食に近いペースト食を作ることもできる。

 レーザー照射タイプでは、出し巻き卵などを作ることができる。

 現在はまだ研究・開発段階で、今後この技術をどのような場面で活用できるのかを調べている。介護食以外でも、例えばエビの素材を使わずに、魚のすり身の硬さや風味を調整して作るエビ風の刺身など▽アレルギー▽糖尿病などの疾病▽血糖値――など個別ケースに対応した同じ見た目の病院食づくりとしての活用も期待できる。

 今後は、コーヒーメーカーのように、3Dフードプリンター1台あれば、多種多様な介護食を作れるような機器も開発できれば、より多くの人の役に立つと考えている。

 見た目を本来の素材に近づける事で、食事の意欲向上にもつながる。人が食べる喜びや安全性を最新技術を使って実現していきたい(談)

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(シルバー産業新聞2023年8月10日号)

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