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地域特集④三重県 「地域性」を克服する多職種連携と地域密着サービスの啓発

地域特集④三重県 「地域性」を克服する多職種連携と地域密着サービスの啓発

 南北に長く1府5県に隣接する三重県は、県内4つの老人福祉圏域(北勢・中勢伊賀・南勢志摩・東紀州)が設定されており、それぞれに人口、高齢化率、介護ニーズ、介護サービス整備量などが大きく異なる。たとえば北勢エリアは大都市・名古屋に近く、中京工業地帯にあたることから高齢化率も比較的緩やか(26.1%)なのに対し、和歌山県に隣接する東紀州エリアは高齢化率が高い(43.0%)。三重県医療保健部長寿介護課長の内藤充彦氏は「必要な人に、必要な介護サービスが最適に提供されることが大切。県として市町村とともに適切なサービス確保を目指す」と話す。同時に同県は介護人材確保のため、全国に先駆けて「介護助手制度」を開始したほか、介護ロボット・ICT活用のため地域医療介護総合確保基金での助成割合を80%(ほかの都道府県は75%)に引き上げるなど、将来を見据えた介護現場改革の最先端地域の側面ももつ。

施設入所に先駆けた在宅サービス整備と周知

 三重県の居宅介護サービスの人口当たりの事業所数の傾向として、全国平均に比べて福祉用具貸与や通所介護、短期入所が多い一方、訪問入浴、訪問看護、通所リハビリが少ない傾向がある(グラフ1)。

 内藤充彦・長寿介護課長は「訪問看護や通所リハビリの事業所数が少ないのは、人員要件を満たすための看護師や医療系職種の確保が難しいことがあるのだろう。また、特養の代わりに短期入所を長期利用するロングショート利用も短期入所が多い背景にある。定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスを活用してもらえば、必要なサービスを利用しながら、在宅生活が継続できることをもっとPRしていきたい。多職種連携に必要な人材は、今後ますます貴重になる。県としては、地域ケア会議に多くの専門職が参加いただけるように支援をしていくつもりだ」と話す。

「必要な人に、必要なサービス」を届けるために

 県内の保険者間でも事業所数の多少に開きがみられる。たとえば短期入所は、度会町で県平均の2.5倍以上、木曽岬町は県平均の約2倍など輪をかけて多い一方、木曽岬町に隣接する桑名市は県平均の半分、度会町に隣接する伊勢市は県平均の7割ほどに留まる。

 通所介護についても、川越町が県平均の2.5倍以上、鈴鹿広域連合、明和町が約1.5倍と多いのに対し、度会町は県平均の半分以下に留まる。訪問介護は、紀南広域連合で県平均の1.5倍となる一方、鳥羽市は県平均の半分以下、菰野町、朝日町は県平均の半分という状況。

 訪問看護についても、多気町、度会町は県平均の約2割と少ない一方、四日市市は県平均の1.6倍、朝日町、鈴亀広域連合は県平均の約1.2倍と多い。

 内藤氏は「どのくらいのサービス量は多すぎ、少なすぎとは一概に言えない。地域実情や利用者の意向、代替するサービスがあるのかなど多角的に分析し、本来必要と考えられるサービス量が不足するようであれば整備していく。基本は『必要な人に、必要なサービスを提供すること』と考えている」とした。

 さらに「訪問看護は訪問介護に比べて利用料が高いという認識が、利用者だけでなくケアマネジャーにもあるのではないか。訪問看護や通所・訪問リハビリの有効性や必要性を理解してもらうため、関連団体の協力を得ながら情報提供や啓発を続けている。退院後の連携も必要なので病院の医師にもPRを行っている。最近の傾向としては、コロナ禍で入院や通院がしにくくなる中、訪問看護の必要性が見直され始めた」と説明する。

グラフ1(介護人口1人あたり事業所数の全国値との比較)

グラフ1(介護人口1人あたり事業所数の全国値との比較)

在宅支える「老健」整備促進のために

 介護施設の整備についても、特別養護老人ホームは先の第7期計画に沿って広域型特養408床、地域密着型特養87床を整備した結果、特養全体の定員数は1万795床(うち広域型9705床、地域密着型1090床)となり、将来に備えた待機者などを除いた実質的な待機者は178人と待機者解消に向かっている。

 必要性の高い待機者の適切な入所を進めるため、三重県老人福祉施設協会などと協働で「入所基準策定指針」を定め、入所決定の適正化を図ってきた。「80点以上の人を優先度が高い待機者として取り扱うようにしている。当県独自の取組としては、毎年25施設をめどに施設訪問調査を行い、必要性の高い人が入所できているか確認するようにしている。21年度は1万329人の入所者のうち、要介護2以下の例外的な入所者が341人(3.3%)となっており、おおむね適正な入所判断がなされていると考えている」(内藤氏)と説明する。

 介護老人保健施設は、先の第7期計画期間中の施設整備はなく、廃止が48床と減少に転じ、老健の定員数は6732床となった。

 「老健は医療、看護、介護、リハビリテーションといった多様なサービスを総合的に提供できることから、中核的な役割を期待することに変わりない。整備が芳しくない背景には、管理者は原則として医師であることや、医療系職種の確保が難しいこと、施設整備費が1施設1500万円と、1床単位の特養に比べて総額が低いことなどが考えられる。また、介護保険の見直しの中で、在宅復帰・在宅生活支援の役割を果たす施設ほど基本報酬が高くなったが、コロナ禍もあり利用者の入れ替えがうまく行かず、入所者が減ったことがあるのではないか。第8期計画では定員30人以上の老健整備(創設)に施設整備費による支援をするとともに、支援の時期も事業の立ち上げの初年度に必要な支援を行うこととしている。こうしたこともあり、今事業計画中に参入を検討する法人も現れ始めた」(内藤氏)。

 介護療養型医療施設については、療養病床の再編に伴い4施設が介護医療院に転換し、3施設が老人保健施設に転換している。20年5月実施の転換意向調査によると、介護療養(8施設228床)は、24年4月までに「医療療養病床等の医療保険の病床への転換」が44床、「介護医療院等への転換」が168床、「病床廃止」が16床の予定となっている。

三重県の介護保険データと全域の地図

三重県の介護保険データと全域の地図

介護ロボット・ICT活用の最先端のわけ

 介護職が繰り返し行う清掃・配膳・下膳・介護記録の入力などの業務について、地域の元気高齢者に「介護助手」としてサポートしてもらうことや、介護ロボットやICT機器を活用することで介護職の時間を創出し、これまで以上に質の高い介護を実現する取り組みが全国的に進んでいるが、同県はその先駆地域でもある。

 内藤氏は「介護助手は国の22年度予算で普及に向けたコーディネータ配置が進められることになったが、全国に先駆けて15年~21年に三重県老人保健施設協会が中心となり取り組まれてきた。のべ84施設が介護助手を募集することになり、そのPRを県予算で支援してきた経緯がある。介護ロボットやICT導入支援については、関係者の集う三重県地域医療介護総合確保懇話会で、国の示す75%に積み増して80%に引き上げることとした。介護施設の関心も高く、21年度は9600万円の当初予算に対し約5億円の申請があり、補正予算等により3億1000万円とした経緯もある。22年度予算では4億円を確保している。この背景には、21年度より科学的介護情報システム『LIFE』が始まり、この取り組みが特に老健の主要な加算の要件となっていることから、介護施設の支援の側面もある」と説明。2040年の社会変化を見据えた人材活用と介護現場改革で全国をリードする三重県を誇った。

(シルバー産業新聞2022年4月10日号)

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