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広がるLIFE利用 老健75%で加算算定

広がるLIFE利用 老健75%で加算算定

 厚生労働省は2月27日、今年度のLIFEに関する調査研究事業の結果を社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会(委員長=松田晋哉・産業医科大学教授)で公表した。2021年4月から始まったLIFE関連加算の算定実績は、施設系サービスを中心に各サービスで伸びている。一方で、フィードバックを提供サービス・ケアの見直しに活用している事業所は2割弱に止まる。LIFEの課題とされるフィードバックの充実、入力負担の軽減、さらには訪問系サービスや居宅介護支援での活用も次期介護報酬改定のテーマとなっている。

「LIFE活用した議論実施」45%

 今回、報告されたのは、LIFEを活用した取組状況の把握と、次期テーマとなる訪問系サービス・居宅介護支援事業所LIFEの活用可能性に関する調査研究事業の結果概要。昨年度に引き続き、今年度も実施されている調査だ。結果は、介護給付費分科会に報告され、次期介護報酬改定を議論する材料となる。

 介護保険総合データベースによると、22年9月時点で「科学的介護推進体制加算」などの「LIFEへの情報提供を要件とする関連加算の算定実績は表1の通り。老健の75%を筆頭に、各サービスで算定実績は伸び、LIFEを利用する事業者は増えてきている。21年4月と比べると、特養も30ポイント近く伸びた。入所者の情報を取得しやすく、LIFEに紐づいた関連加算も多い施設系サービスをみると、最も算定率が低い介護医療院でも半数超。在宅サービスでも通所リハが5割を超えた。通所介護は43%。居住系サービスである特定施設も13.2%から39.4%と大きく伸ばしている。
LIFE登録済事業所へLIFEの活用場面について尋ねたところ、「利用者状態の管理・課題把握」が最も高く63.6%。昨年度から6.7ポイント増と、上昇幅も最も大きかった。ケアのPDCAサイクルを回す上で、LIFEに最も期待されている「フィードバック票を用いた提供サービス・ケアの見直し」で活用している事業所は、昨年度から1.8ポイント上昇したもののまだ2割足らず。引き続き、フィードバック票の充実が今後の課題といえる。

 事業所の個別意見では、「目標に対する現在の状態がフィードバック票で示されていれば、利用者にも説明しやすくなる」や「利用者ごとに、全国データをもとに同じような状態の人へどのようなケアを行うと有効なのか示されるとよい」などが挙げられている。

 LIFEを活用して、事業所内で「議論を実施している」割合は45.7%。昨年度から6.2ポイント増加している。議論の内容は、「利用者の状態像の変化」62.6%(昨年度比12.9ポイント増)などが多かった。

 LIFEへの情報提出の方法は、LIFE上で直接入力する方法と、介護ソフトからCSVファイルを出力してインポートする方法の2通りがある。入力方法はソフトを使った「インポート機能のみ」が64.0%と最も多く、昨年度と比べても6.2ポイント上昇した。「LIFE上での直接入力のみ」は25.8%(昨年度0.3ポイント増)、「インポート・LIFE直接入力の併用」9.8%(同5.5ポイント減)だった。

提出時間、中央値で1人10分

 入力作業など業務負担の軽減もLIFEの課題だ。前回改定の介護給費分科会のとりまとめでも、「事業所・施設側の入力負担の軽減を図る」ことが今後の課題として明記され、24年度改定に向けて検討されるとみられる。

 業務の負担感を聞き取ったところ、「負担を感じる」「やや負担を感じる」をあわせると76.4%(1.7ポイント減)だった。具体的に利用者1人あたりにかかった時間も調査した(表2)。「利用者の状態の評価」→「ソフトや紙への入力・記載」→「LIFEへの情報提出」の順で時間を要している。また、中央値に対して平均値は3.4~4.8倍といずれも差が大きく、かなりの長時間業務になっている事業所もいることが伺える。事業所からは、「情報提出する利用者数が多い月に負担が大きい」との意見があった。

 同委員会のメンバーであり、この調査事業の委員長も務めた藤野善久委員(産業医科大学産業生態科学研究所教授)は「今後、同様の調査をする際は、労力や期待値などに見合った負担かどうかを尋ねたほうがよいのではないか」とし、質問の改善を提案した。

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次期テーマ「訪問系・ケアマネへ拡大」

 LIFE関連加算がない訪問系サービスや居宅介護支援でのLIFE活用は、次期報酬改定のテーマの一つだ。活用の可能性を探るため、同調査では訪問介護、訪問看護、定期巡回、居宅介護支援の各サービスでモデル事業も行った。モデル事業所で4人の利用者を選定し、LIFE関連の基本加算である「科学的介護推進体制加算」に沿った項目の情報を提出した。

 事業所でフィードバック票を活用し、ケアプランや各サービス計画の妥当性を検討した割合は全体で57.7%。訪問看護の70%が最も高く、訪問介護が35.7%と最も低かった。居宅介護支援は59.3%。妥当性を検討しなかった理由については、「フィードバック票の見方がわからなかった」が57%、「検討するための人員や時間が不足している」49%だった。

 複数回答で尋ねた「LIFEの活用が役に立つ点」では、「これまで把握していなかった利用者の状況について評価するようになる」(53.2%)と「LIFEを利用した取り組みを通じて、利用者の状態の評価方法が統一される」(51.4%)が5割を超えた。そのほか、「フィードバック票を用いて事業所の傾向を把握できる」が48.6%、「LIFEでデータを一元管理することで、多職種で情報連携しやすくなる」は42.3%だった。

「ケアの質に寄与」評価割れる

 「LIFEがケアの質の向上に寄与するか」は、「思う」16.7%、「やや思う」37.0%で合計53.7%。一方、「思わない」14.8%、「あまり思わない」29.6%で合計44.4%だった。この結果に対して、木下彩栄委員(京都大学大学院教授)は「半数近くが、ケアの質にあまり寄与しないと答えているのが気になる」と発言。調査委員長の藤野氏は、個人的な見解と前置きしたうえで、「LIFEへの期待値は人によってバラバラ。他事業所と比較した自事業所の評価を知りたい、利用者の経過をみたいというものから、具体的なプランやサービス内容を提案してほしいといったレベルまである。そうした非常に高い期待を持っている人からすると、今の状態では『寄与しない』となるのだろう」と考えを述べた。

(シルバー産業新聞2023年3月10日号)

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