居宅介護支援事業所への委託「増えた」1割 ケアマネ不足も背景に
東京都介護支援専門員研究協議会(CMAT、小島操理事長)はこのほど、都内62市区町村に対して、2021年度介護報酬改定の影響についてアンケート調査を実施した。改定後に、自治体内の地域包括支援センターで居宅支援事業所への委託数が「増えた」自治体は1割に過ぎなかった。前回改定で、委託を推進するための委託連携加算(月300単位、初回のみ)が創設されたが、効果が限定的であることが伺える。一方で、ケアマネジャー不足などを背景に「減った」という自治体が3割を占めた。
新設加算分の委託料平均3128円
委託料を変えたとする28自治体の基本報酬分の委託料は平均4575円。改定前と比べて77円上昇している。改定後の委託料で、最高は4993円、最低は4107円で差は886円。改定前は4422円に設定する自治体が最も多く9自治体。改定後は4494円が10自治体で最多だった。
委託連携加算分の委託料は平均で3128円となった。最高額は3420円、最低額2813円。3078円の設定が10自治体で最多だった。
またアンケートでは、委託連携加算を算定した利用者が別の居宅介護支援事業所を利用する際に再算定できるかどうかも尋ねた。30自治体中、7割が「新たに担当する居宅介護支援事業所でも算定できる」、2割が「利用者1人につき1回としているため、新たに担当した居宅介護支援事業所は算定できない」と回答。自治体によって再算定の運用が異なることが明らかになった。該当事例や相談がないため、運用ルールはまだ決めていないという自治体もあった。
ケアマネ不足半数が「感じる」
さらに「受験資格の厳格化などにより、ケアマネ不足が深刻化しているという指摘がある」との意見も。ケアマネ試験では、介護実務経験での受験ができなくなった18年の受験者数が前年比で6割超と激減した経緯がある。このほか、「土日祝日や夜間対応を求める声もあり、特定事業所加算の適用を受けている居宅介護支援事業所や算定事業所でのケアマネ不足も指摘されている」との意見もあった。
「電磁的方法の同意で押印不要」と指導57%
一方、ケアプランの標準様式から押印欄が廃止されたことで、事業者が混乱しないように「押印を妨げるものではないので、従来通りの方法でも差し支えないと伝えている」といった回答もあった。
電磁的対応を認めるとしながら、「事業所側の設備の問題もあるため、積極的に勧めてはいない」という声もある。
一部書類について、「署名、押印を得るよう指導」は18.2%。具体的に署名や押印を求める書類は「要介護認定情報の開示請求」3件、「居宅サービス計画届出書」と「居宅サービス計画第6表」が1件ずつだった。
「居宅サービス計画届出書は『署名または押印』と注意書きを入れている」「個人情報の開示請求は極めて慎重な取り扱いを要するため、法人印を押印してもらっている」。
「従前通り」と答えた自治体も6%あった。「厚労省の最新のケアプラン記載要領でも、『居宅介護支援事業者が保存するサービス利用票(控)に利用者の確認を受ける』との記載は修正されずに残っており、標準様式に押印欄が省略されても免除されたと解釈するのは難しい」との見方を示す自治体もあった。
アンケートは、CMATが昨年9~10月に、都内62自治体の介護保険担当部署を対象に実施。36自治体から回答を得た(有効回収率58.1%)。